概要
生薬と感慨
生薬は、薬事法によって医薬品として扱われるものと、食品として扱われるものの2種類に分類される。日本国の薬事法では、生薬も医薬品として扱っており、ヨーロッパでもドイツなどでは医薬品である。ただ、アメリカ合衆国では『薬局方』に生薬が収載されているにもかかわらず、生薬から精製した有効成分は医薬品として認めるものの、その原料である生薬自体は医薬品として認めていない。それ故、生薬を指して未精製薬 (Crude Drug)と呼び表したり、民間伝承で用いられる場合などでは「薬用ハーブ (herbal medicine)」と呼び表すことも多い。
江戸時代に生薬は、漢方薬の原料という意味で薬種(やくしゅ)とも呼ばれており、鎖国下においても長崎貿易や対馬藩を通じた李氏朝鮮との関係が維持された背景には山帰来・大楓子・檳榔子・朝鮮人参などの貴重な薬種の輸入の確保という側面もあった。輸入された薬種は薬種問屋・薬種商を通じて日本全国に流通した。
生薬は天然物であることから、含有されている薬効成分は一定ではなく、同じ植物であっても、産地や栽培方法、あるいは作柄によっても成分は変わる場合も多い。たとえば、薬用人参を例に取ると、朝鮮半島産のものは「朝鮮人参」や「高麗人参」と銘打たれて重宝されるが、朝鮮半島より導入した国産のものは、「御種人参」(オタネニンジン)と呼ばれ、格が下がるとみなされている。
薬草の組織に水分が含まれていると、重量や容積が大きく、品質が安定せず、また腐敗やカビが発生しやすい。このままでは、遠隔地に出荷することはできない。この問題へのもっとも原始的な対処法は、天日に干すことである。含まれている酵素によって、収穫すると薬効成分が崩壊してしまう生薬もある。このようなものは、収穫したら速やかに熱を加え、酵素を失活させなくてはならない(この点については、緑茶や紅茶の製法についても参照されたい)。また、長期保存には、除去し切れなかった昆虫、微生物などを殺す加工も必要である。
生薬と楽器
生薬と楽器の繋がりは、古くは紀元前に遡りその関係をしることができる。そもそも薬全般は、植物から摂れる油脂や乾燥させてつくられ粉薬などに分類されるが、その中でも釉薬に使われるものも含まれるのである。つまり、多くの楽器に釉薬として使われる塗料は、元来はそもそも植物を原料として、その起源は薬へと繋がっていくのである。考えてみれば、万来地球上に住む動植物はこのような恩恵にあずかり、そして相互に利用されているのである。